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《44》ユキユキデァ
擬音、擬態語といえば宮沢賢治の名前が浮かぶ。方言でそうした語は多くあるが、だんだんと使われなくなっている現実がある。 表現の画一化が進むのはちょっとばかり悲しい気がする。 自分の身体や心の状態をよく言い表していると感じるのは、オラホだけでなく、全国どの地方にもあるだろう。 【ユキユキデァ】… 「ふらふらする」の意味。 「揺れ動いている」様子を表す擬態語であり、主として自分の心身状況を示すときに使う。しかし、自分から見て他者などがゆらゆらしているような状態を指す場合もある。 「あまりええ湯っこで、ずっと浸かっていたば、あがったとだんに、ユキユキデァぐなってしまったおだ。」 (あまりいい温泉なので、ずっと入っていたら、あがったとたんに、ふらふらしてしまったよ。) 「向ごの家の嫁さん、遊びにいぐどころなんだが、さっきワラシたぢと一緒にユキユキって出てったけど」 (向かいの家のお嫁さん、遊びにいくのかな、さっき子供たちと一緒に嬉しそうにゆらゆらしながら出かけていったよ) 二つ目の例は、女性の体型的なニュアンス(太っている)や「うきう
晴夫 沼澤
2 日前読了時間: 2分


《43》トゼネァ&
歳末が近づくと、慌ただしさと裏腹に心淋しくなる気持ちがよぎる日もある。そんな時によく使うオラホのコトバがある。 齢を重ねてくると、この語の響きがまた心に沁みてくる。 【トゼネァ】… 「淋しい」の意味。 「退屈だ」という意味も含まれると、いろいろな関連本に記されているが、個人的にはそんな感覚はほとんどない。 【トゼダ】 も同じように使われるし、こちらの方がやや「退屈だ」というニュアンスが感じられるかもしれない。 この「とぜ」とは 「徒然(とぜん)」 であり、 「なすこともなく退屈なこと」 と広辞苑にある。あの「徒然草」のつれづれということでもある。 「こごらあだりも、空き家ばがり増えてきて、まんちトゼネぐなってきたなあ」 (この辺りも、空き家ばかりが増えてきて、とても淋しくなってきたね) 近い意味を持つ語を思い浮かべると 【タチポシネァ】 や 【サビシネァ】 がある。 【サビシネァ】 は「さびしい」「さむい」からだと容易にわかるが、 【タチポシネァ】 は「心細い・不安」という感覚が強くなる。語調を整える接頭語「た」をつけて
晴夫 沼澤
12月7日読了時間: 1分


《42》カンジョワリ&
秋田県出身のTV等で露出が多い芸能人は、由利出身が目立つからだろうか、 【ショシ】=「恥ずかしい」 が秋田方言としてよく登場するが、全県くまなくこの語を使っているわけではない。 オラホで「恥ずかしい」と言えば、この語がまず思い浮かぶ。 【カンジョワリ】 …「恥ずかしい」「きまりが悪い」の意味。 「勘定が悪い」から来ていると考えられる。 この場合の「勘定」とは、「事態の予測、考慮」だろう。それらがうまく行かないので気持がざわつくということか。 「アタエ大っき舞台の上で、何も喋れなぐなってしまって、本当え、カンジョワリっけたあ」 (あんなに大きな舞台の上で、何にも喋ることができなくなってしまって、本当に恥ずかしかったなあ) 似たようなニュアンスを持つ語として 【ワリ】【ヒトメワリ】【サダケニャ】 などがある。 【ワリ】 は「悪い」の訛りだろうし、様々な恥ずかしい場面だけでなく、「申し訳なく思う」場面でも使われるので、幅が広い。現在でも日常的に残っている。 【ヒトメワリ】【サダケニャ】 は「人目」や「定め」が関係するように思われ、そ
晴夫 沼澤
12月2日読了時間: 1分


《41》ビャッコ
改まった場では使わないにしても、今でも日常生活では使用するし、十分耳に馴染んでいるオラホのコトバがある。 この語は、代表的な一つだろう。 【ビャッコ】 …「ほんの少し」「ちょっと」の意味。 「あの試合なば、あどもうビャッコで、逆転できるがったなあ。」 (あの試合は、あともう少しで逆転することができたのにねえ) 「急いでこの菓子を作るがら、そごさ腰かげて、ビャッコ待ってでけれ。」 (急いでこの菓子を作るので、そこに腰をかけて少しだけ待っててください。) 『秋田のことば』の見出しは、 【ばっこ】 が太字になっている。つまり県全体では、そちらが使用人口が多いということか。 『秋田弁一語一会』(佐藤稔 秋田魁新報社)には「10」として項目だてされていて、そこには「 用いられるのは県南の横手・湯沢あたり 」と、限定的な発音の語であることがわかる。 それにしても「少し」や「ちょっと」を表す方言の多さには、改めて驚かされる。自分が使える語だけを拾ってみても、このぐらいある。 【サットガ】【タチット】【チョッコラ】【チョベット】【ペチット】 .
晴夫 沼澤
11月24日読了時間: 1分


《40》シマグ&
方言全般でだんだんと使われなくなるのは、品詞でいうと名詞か形容詞か動詞か…研究者なら傾向はわかるのだろうが、私如きでは今のところ見当がつかない。 思いつきになるのは承知のうえで、少しばかり動詞を続けて取り上げるのも面白いと思った。 たまたま読んだ本から、次のコトバを見つけた。 【シマグ(シマク)】 …「つかむ。つかまえる。」の意味。 「あんまりキガニャクテ、ここなば危にゃがら、あのワラシどご、シマイデデけれ。」 (本当に言うことを聞かないので、ここだと危ないから、あの子を捕まえててください) 秋田弁と言われるいくつかがそうであるように、 古語「しまく」 (とりまく。まきつくの意)が残っている、もしくは訛ったと考えられる語だ。 ところで、この語をもとに出来たとばかり思っていたコトバがある。 【シマグタデナラネ】… 「しまつに負えない。どうしようもない」という意味。 「あの日のイベントなば、そごさ居だ若い人だちよ、騒いでシマグタデナラネけった」 (あの日のイベントでは、そこに居た若い人たちが、騒いで始末に負えなかったよ)
晴夫 沼澤
11月6日読了時間: 2分


昔話14「ねこの恩返し」
「羽後の昔話」も いよいよ最終話 となりました。 いろいろな動物が登場する民話や伝説の世界で、猫の話も当然ありますが、数は少ないように思います。 この冊子に収められているのも、この一つだけでした。 語りはこのように切りだされます。 町に近い所の村で、ある古しいお寺があったども貧乏な寺で、おっさんど、とら猫しか居ねがったど。 だれも法事も葬式も頼みにくる人居ねえで、売るにええ物皆売って、売る物も無くて、まんまんも食うごどでぎね有様になってしまったど。 それで猫のとらどご呼んで 「とらとら お前も知っての通り、小さい時からひとつに暮らして居だども、こうゆう貧乏だがらお前にまんまも食わせられねなで、お前どごさでも行って、まんま食わせでもらえる所さ行って暮らせでゃな」て、とらさ言ったば、 「おら、おっさんどごがら絶対離れねえ。おっさんなんぼそったごど言ったって、こうして大きぐなったな おっさんのおかげだ。おらおっさんの所からなば、絶対離れねえおら」 なんぼしたて、えぐって言わねすど。 そうしているうちに、そごのお寺の前をどこかの立派な家の
晴夫 沼澤
10月20日読了時間: 2分


「羽後の子ども」第46集より
「羽後の子ども」第46集(2015年度)から、小学1年生と中学3年生の詩を紹介します。 言うまでもなく、複数の小学校・中学校の閉校があった年度です。 この地域文集の休刊 もそれがきっかけとなったことは確かです。 しかし、子どもたちはその年も変わらず元気で、その子なり...
晴夫 沼澤
10月10日読了時間: 2分


昔話13「物売り」
「羽後の昔話」は、 第13話 となりました。 全14話が収められているなかで、一番短い話で1ページ半しかありません。 ですから、今回は最初から最後まで載せてみます。 話の内容はしごく簡単で、いったい何が言いたいのと思ってしまうほどですが…。 ...
晴夫 沼澤
10月6日読了時間: 2分


《39》タウェネァ
ようやくドジャースが地区優勝した。(2025シーズン) 同様の方も多いだろうが、「大谷」中心にテレビ中継を視聴している。 今年の試合のなかでとりわけ印象深いのは、今月、山本由伸が登板してノーヒットノーランを逃し、はてにはリリーフ陣が総崩れで逆転された時だ。...
晴夫 沼澤
9月29日読了時間: 2分


「羽後の子ども」第45集より
残りわずかとなってきました。 「羽後の子ども」 第45集(2014年度) より、小学生の詩2編を紹介します。 この2014年度は、消費税8%の引き上げから始まりました。 学校統合への準備が本格的に進められた年でもあります。 ...
晴夫 沼澤
9月25日読了時間: 2分


《38》シコタマ&
時流は極端な言動を求めなくなった。 それはいいことも悪いことも同様だ。 過度なことを言い散らかす人も、仕事や教育の場でも、地域社会でも、例えばコンプライアンスなどと言われて、姿を消しつつある。 それに伴って、オラホでもこんなコトバを使うことがめっきり減った。 ...
晴夫 沼澤
9月17日読了時間: 1分


昔話12「化物退治」
「羽後の昔話」は、 第12話 です。 非常にオーソドックスな題名ですが、昔語り風に発音すれば「 バゲオノタイジ 」となることでしょう。 お話は「泊まる所を探している村を通りかかった者が、化け物が住みつく荒れ寺などに行って退治し、そこに住むようになる。めでたしめでたし...
晴夫 沼澤
9月11日読了時間: 2分


「羽後の子ども」第44集より
「羽後の子ども」第44集(2013年度)より、小学生・中学生各一編を紹介します。 2013年度。あの大震災から3年目、TVでは「あまちゃん」が放送され、プロ野球の東北楽天が優勝した年でもありました。 その年度町広報のPDF版はここからご覧になれます。 ...
晴夫 沼澤
9月8日読了時間: 2分


《37》オベダフリ
若い人にもまだまだ十分通用する方言は、結構ある。 昨日のNHK地方局の夕方ニュース番組、 「秋田弁で川柳」コーナー で取り上げられたコトバもそうだろうと思った。 【オベダフリ】 …「知ったふり・知ったかぶり」を意味する。 ...
晴夫 沼澤
9月5日読了時間: 2分


「羽後の子ども」第43集より
「羽後の子ども」第43集(2012年度)より、小学生と中学生の詩を一編ずつ紹介します。 この年度に入る前も、年を越した冬も豪雪でした。春には暴風による被害などもあり、防災意識が強調された頃でした。 震災のがれき受け入れも始めた年です。...
晴夫 沼澤
9月3日読了時間: 2分


《36》サラウ
八月最終日曜は、我が町ではどの地区でも「住民運動会」が賑やかに開催されていた。しかし、コロナ禍を経ていくつかの地区では中止・変更が余儀なくされている。 そんななかでも再開・継続している地区もあり、住民のコミュニケーションが盛大に図られていると思う。 ...
晴夫 沼澤
8月31日読了時間: 1分


《35》タネル
以前のように大家族で祖父母から孫までが同居していた時代は、テレビなどの影響があっても日常語はオラホのコトバがずいぶん家中に響き合っていたはずだ。 若い人たちの核家族ではもちろん、高齢者の二人暮らしなどであれば会話頻度が少ないし、 日常語として消えゆく方言 は多いだろう。...
晴夫 沼澤
8月27日読了時間: 2分


《34》ウダデ、もう一度
一昨年(2023)以上に厳しい暑さが続く。 人と会った時は、いつも以上に天候・気温が話題になるだろう。 そういう場合は、 【ヌグェ】(温い) に続いて、形容詞として 【ヨイデネ】(容易でない) や 【ユルグネ】(緩くない) などが使われているのではないか。 しかし ...
晴夫 沼澤
8月25日読了時間: 1分


「羽後の子ども」第42集より
「羽後の子ども」第42集(2011年度)より小学生の2作品を紹介します。 なんといっても年度直前の3月11日の東日本大震災のことを、いろいろと引きずった一年だったと思います。余震もありましたし、延期になった行事等も少なくありませんでした。...
晴夫 沼澤
8月22日読了時間: 2分


《33》ソラネ
一般的な語と訛りがくっついているために、なんとなく秋田弁のように捉えてしまうことは、調べてみると結構多いかもしれない。 例えば、オラホでよく使う(使う者は頻繁に使うはず程度の意味)コトバに、これがある。 【ソラネ】...
晴夫 沼澤
8月19日読了時間: 1分
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