昔話8「うたむこ」
- 晴夫 沼澤
- 6月26日
- 読了時間: 2分
「羽後の昔話」は、第八話となりました。
「うたむこ」という題名の冊子ページ数がわずか2という短い話ですが、なかなか味のある内容です。

さっそく出だしを引用します。
一人娘さ 婿とるな、どういう条件で選んだらえがべとなって、一首ずつ 歌を書かせでみるどなって、題は上は「月の夜」 下は「かりける」どいうその中さ、自分の思い ええあんべえに入れる話こだんす。
ある、まんつ豪農だんすごでゃ、昔の長者の一人娘さ、婿もらわねば ならぬ年頃になって、婿なりでえ人、たくさん居るわげんすよ。長者だもんだから。
何として、それ選んだら えがべどなって、歌をうだわせで、一番ええなえらんだらって、親類たちの相談になったわげ。
話の前提を繰り返していくような出だしです。その後、「八人」の「婿になりでえ人」の歌が披露されます。
「桜の花」「雪が降る」「かり列をなして」「月見の宴」「そぞろ歩き」「さざ波」など、様々な言葉や設定が歌われて披露されるわけですが、結末で選ばれた者が読んだ歌は…
「月の夜に娘一人に婿八人 我がなろうと思いかりける」という、いわば変哲のない一首。
その訳は…(ある程度、予想できるのではないでしょうか)。
いかにも農村に語り継がれてきた話のオチだなと思いました。
いわば「花鳥風月」とは、農に生きる地域にとってどんなものだったか、一面で想像できます。
それにしても「婿選び」という設定は、例えば「かぐや姫」など様々に使われます。
逆に「嫁選び」は少数だと思います。
男尊女卑が続いてきた国ですが、こうした細かい所を見ると、やはり男の「弱さ」も結構見抜かれていた…ということでしょうねえ。
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