昔話9「へびむこ」
- 晴夫 沼澤
- 2 日前
- 読了時間: 2分
「羽後の昔話」は、第9話です。
題名は前話「うたむこ」と似ていますが、話は全然違います。
筋としては、よく見られる「娘を人間以外の獣等、化物に嫁がせる」流れなのです。
日照りで困っている百姓という設定が、この周辺で語り継がれてきた理由でしょうか。
さっそく、出だしを引用して紹介します。
じ様、田さ水すずらねで、あんまり日照り続きでな、困ってしまって、ひとりごどだんすごでゃ。
「だれがこごさ、この田の水はってけるもの居だら、娘三人持ってえるがら、一人けるおのな」って、まずひとりごと言ったんすごでゃ。
その次の朝まになったば、大したえぐ水はれでよ、大したええ稲出来だなだけおの。
それで、田さ水はれだどごえども、おれのいうごどを、だれが聞いででこうしてけだべがって思って居だば、そごさ立派な男立ってえだなしゃ。その男あ、
「昨日言ったな 本当なべな じいさん」って言われだばな、「なんとも仕方ねえ、本当だ」って言ってしまったんすべた。
したば、その男、大きヘビになって、ずるずるずるど行ってしまったど。
それで家さ帰ったら、それが苦で起きられねな。
この後の展開はご想像通り。情を打ち明けられた姉妹が登場し、長女も二女も断る中、末っ子娘が言うことを聞いて、嫁にいくために男(ヘビ)について山奥へ行き…という話になります。
その娘が持ち物として挙げたのが「ふくべ(ひょうたん)十個」と「針千本」でした。
それを使って、退治することになるのですね。

さて、獣や化物などが娘を嫁に欲しがって人間の困りごとを解決してくれるこうしたパターンは多いわけですが、考えようによっては少し可哀そうな気もしますね。
この話の最後は、こんな文でまとめられていました。
「娘なば、嫁にもならねで戻ってきたども、後で祟られだって聞いだごどなばねえんすた。」
こう書かれることは、逆に「祟られた」言い伝えもあるからなのではないでしょうか。
「赤沼」という地名も出てきて、大蛇の血で赤くなっていると伝えられているとすれば、何か他の因縁めいた出来事も語られているのかもしれません。
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