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昔話10「あいさつ」

  • 執筆者の写真: 晴夫 沼澤
    晴夫 沼澤
  • 2 時間前
  • 読了時間: 2分

 「羽後の昔話」は、第10話となりました。


 題名が実に平凡というか、当たりまえ過ぎるので、かえって気になります。

 読んでみると、婿さんが嫁さんの実家に行って挨拶をするときの「ドジ話」のようなものでした。

  

 さっそく、出だしを引用して紹介します。


 嫁さんの家、芋の子づくりの大した上手な家だったど。

 婿殿あよ、「お前の家さ行ったら、何えが誉めるごどねえんすが」って聞いだんすど。


「おれ家の人たち、うんと芋の子こしゃ 上手でよ。必ず芋の子汁どが、芋の煮つけどがよ、なえがらかえがら、みんな芋のついだ、芋の子のもの出すがら、芋の子誉めでれば、一番嬉しがるし 喜ぶべもの」

「なったごど言って 誉めだらえがべ」

「しだがらよ、芋の子ずおの ええもんだ。くぎも食えば葉も食うえ。根っこも食うえば子も食うえ。そう言って 誉めだら えがべった」

そう言って嫁さんは教えだごでゃ。


「ああええ。これなば雑作ねえ、んだらそう言って誉めるな」って言ってよ、二人してまず行ったど。

嫁さんの家では えぐ来てけだんすなのって言ってえで、お膳出したわげよな。

「えっぺえ飲んでえってけれ」どて、そうしたば出てくる料理はやっぱり 芋の子つがねものはねっけど。

あんまり 芋の子なもんで、・・・・・・


 芋の子料理を誉めることになった婿さんは、嫁さんと綱を通した合図を決め、褒めちぎっていくわけですが、途中で嫁さんがおしっこに行きたくなり…と、続きます。


 結果、実家の人たちが腹を立ててしまうことになるのですが、悲惨な結末にはなりません。

 つまり、「過ぎたるは及ばざるがごとし」のような、行き過ぎや気のまわし過ぎをたしなめる話になっていると言っていいでしょう。


 いわゆる「昔話」としては珍しい部類かもしれません。

 しかし、こうした教訓めいた「噺」は、昔はよく聞かれたのではないでしょうか。

それが人の口から口へ伝わっていく。そこには電波や機器を通した今の伝わり方とは、異なる世界があるように思います。


 そんなことを、ふと考えさせられました。

 
 
 

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