昔話7「毒ナシ」
- 晴夫 沼澤
- 6月12日
- 読了時間: 2分
「羽後の昔話」は、第七話です。
狂言「附子(ぶす)」に代表される和尚と小僧の話です。
羽後町では「梨」が、対象とされていたようです。お話はこんなふうにシンプルに切りだされます。
お寺に おっさんとこぞうさん二人 居だど。
おっさんなば、「これ毒ナシだ」ど こぞうさんさ 聞がせでえだなだど。
「これ毒ナシで、これを食えば お前たち、たちどころに死んでしまう」って
「そのナシなば、絶対に食われねえし、手もあてられねえ」っても言われでだど。
なぼ、おっさんがそう言ったたて、知らねえこめに、無ぐなってえるけどよ。
「これなの、おっさん食ったにちがいねえ。毒でも何でもねえ。おらどご おどしてなだがら、おっさんなば今日 葬式さ行って 手間かかるしなあ、あんまり うめそうだがら、おらだ食ってみるが」
「食って死んだたて 仕方ねえなや」
そしたば、たえしたうめえくてよ、あんまりうめもんでよ、そうゆうやつ、ねちこびだおっさんなば、なんだって食わせねだんす。

と、この後の筋はご承知の方も多いでしょうが、全部食べてしまって、帰ってきた和尚への言い訳へと展開するわけです。
小僧たちをだまして美味しいものを独り占めしている和尚がやっつけられる痛快さは、定番ですが面白みがありますね。
さてこの「美味しいもの」は、この話では「梨」でしたが、有名な狂言では「黒砂糖」が多いようです。その他「水飴」「甘酒」もあるようです。
韓国にも似た話があり、そこでは「柿」という場合もあるようです。
こうした物語の他にも、「和尚と小僧」を扱った類型は28もあり、「その骨子は、頓智頓才のきく稚僧が俗気の抜けないけちな和尚を侮りからかい、閉口させること」と資料に載っていました。
幼き者は、大人からすれば「後から来る者」です。
ある意味では、そうしてやっつけられなければ、未来は作られていかないのかもしれません。ずいぶん大きな話になってしまいました。
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