昔話14「ねこの恩返し」
- 晴夫 沼澤
- 10月20日
- 読了時間: 2分
「羽後の昔話」もいよいよ最終話となりました。
いろいろな動物が登場する民話や伝説の世界で、猫の話も当然ありますが、数は少ないように思います。
この冊子に収められているのも、この一つだけでした。
語りはこのように切りだされます。
町に近い所の村で、ある古しいお寺があったども貧乏な寺で、おっさんど、とら猫しか居ねがったど。
だれも法事も葬式も頼みにくる人居ねえで、売るにええ物皆売って、売る物も無くて、まんまんも食うごどでぎね有様になってしまったど。
それで猫のとらどご呼んで
「とらとら お前も知っての通り、小さい時からひとつに暮らして居だども、こうゆう貧乏だがらお前にまんまも食わせられねなで、お前どごさでも行って、まんま食わせでもらえる所さ行って暮らせでゃな」て、とらさ言ったば、
「おら、おっさんどごがら絶対離れねえ。おっさんなんぼそったごど言ったって、こうして大きぐなったな おっさんのおかげだ。おらおっさんの所からなば、絶対離れねえおら」
なんぼしたて、えぐって言わねすど。
そうしているうちに、そごのお寺の前をどこかの立派な家の葬式が通って行ってあったど。したばとら、「おっさん おっさん、ええごど おら考えた。一寸まってけれ」
葬式の行列ずーっと行って、広いどこかのお寺さ着いで、その祭壇の上さ葬式のかご置えだんすど。
「おっさん、おれしゃ どんどど走って大急ぎで行って、あのかご宙づりにするがら、もう少しおもったら、とらの名前を三回よばってけれ、おっさん」っていうど。
「そんたごどしてなんとする」
「まず、おれのするごど見ででけれ」・・・・・・・

こんなふうに進み、宙づりになった立派な葬式のかごをめぐって、「とら」が策略したことが見事にはまり、「おっさん」は一躍有名になり、繁盛していくという展開でした。
「恩返し」の内容は、民話の一つのパターンです。
ここでは「助けた」「救った」動物からの恩返しということではなく、「一緒に過ごした」ことの感謝・親愛の情が起点となっているようです。
この話では、最後に何故か「とら」は姿を消しています。よく、最後が近い猫は身を隠すように去っていくと言いますが、そうなのでしょうか。
戻ってほしいと願ってしまうのは「おっさん」だけではないでしょう。
さて、ここでは印象的な締めの言葉があります。
全14話を代表して言ってもいいかなと思うほどの、名言!です。
「畜生だって恩を忘れねぇでぇなし。トッピンパラリノプー。」






コメント