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昔話13「物売り」

  • 執筆者の写真: 晴夫 沼澤
    晴夫 沼澤
  • 10月6日
  • 読了時間: 2分

 「羽後の昔話」は、第13話となりました。


 全14話が収められているなかで、一番短い話で1ページ半しかありません。

 ですから、今回は最初から最後まで載せてみます。

 話の内容はしごく簡単で、いったい何が言いたいのと思ってしまうほどですが…。



 ある 婿取り娘 居でな、婿もらったんすごでゃ、その婿さんは、まずちょっとな 面白え婿さんだったな。

 おがしてば

 茶と柿と栗と麩を出して これを町さふれで歩いて売って来てけれって 頼まれだんすごでゃ。


 それで婿 それを天びんにして分げでかついで、「ちゃ くり かき ふ」「ちゃ くり かき ふ」って叫んで歩いたんすけど。

 誰も買う人居ねがったんすど、それで

「誰も買う人居ねけでゃ」って、家の人さ 言ったんすど。

「お前 なったごど言って歩いたどご」

「ちゃ くり かき ふ」「ちゃ くり かき ふ」って ふれで歩いたども だれも買う者居ねえなで、戻ったは。馬鹿臭せえったら・・・・・。

「なじょして、そんたごど言ったら何が何だが分からねえべ。それを ひとつひとつ別々にして わがるようにして言わねば駄目だんすべ」って言われだずおの。

「はあ、なるほどな」って、まだこんど行ったごでゃ。


ree

「ちゃあー別々 くりー別々 かきーぃっ別々 ふーっ別々」って歩いたんすど。

それもさっぱり売れねがったど。

「なんぼ別々にしたたて、さっぱり売れねっけでゃ」って、まだ戻って来たなで、

「こういう者なばしゃ、婿えなのもらったって 家の名立でで行がれね」って、戻されだもんだんすど。



 これで終わっています。

 調べてみると、似たような話が、福岡県「でっちどんの物売り」、島根県「だぁーず子の物売り」とあるようでした。どちらも、もう少し長くオチがついているような展開で、比べると、我が町の話はあっけない感じがします。


 「婿」さんは、なんとなく落語に登場しそうな人物なので、もう少し続けてもよいかなと勝手に思いました。例えば、家の者に教えられる回数を増やすとか、最後には誰かに買ってもらった何かが化けて長者になるとか…。


 と考えると、そうしなかった訳があるのだろうと思います。


 言われた通りのことしかしない者は駄目だ、自分なりの工夫が大切だ、と言ったところでしょうか。これらが「家の名を立てる」ことに通じるのは、いかにも時代を感じさせますね。

 
 
 

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