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  • 執筆者の写真晴夫 沼澤

「羽後町の伝説」を読む(その6)

 冊子「羽後町の伝説」を読み解いていくシリーズ、第六回目は「小豆研(と)ぎ石」という話です。

 

 今回も舞台は飯沢地区。そして伝えられている素材も「石」です。やはり、物言わぬ存在に畏敬の念を抱くのは、人間の一つの習性なのかもしれません。



 さて、今回のダイジェストはこうです。

 

 昔、五合田の道と堰の間で、襷を掛けた若い女が夜な夜な鼻唄を歌いながらさも快よさそうに小石を研いでいるという。度胸のある若い者たちが見に行って、近づいてみたが、進めなくなって体が震え出したという。

 このことを伝え聞いた武士が「これは狐か狸の仕業であろう。一打ちにしてくれよう」と待ち伏せ、現れた女をめがけて切り下した。刀は二つに折れ、武士は気絶してしまった。気づいて見ると道端の大石に刀の傷あとがあり、それからは若い女も現れず唄も聞かれなくなった。

 この後、村人はこの石を「小豆研石(あずきとぎいし)」をいって時折、赤飯を捧げ、痘瘡の神様と敬っている。

 


 現在は整備されて、説明版もあります。

(※『羽後の伝説』には、その原稿に「伝説の周辺」の写真として「上仙道新畑」が載っていますが、誤りだと考えられます)


 こうした伝説は、たいてい目に見えた不思議な現象(または妖怪や悪霊の類)の正体は明らかにされないものが多いようです。今回のポイントは「小豆研ぎ」「若い女」という箇所ですが、様々な民話にも似たような設定がありますね。


 「小豆」はよく「縁起物」で、その赤い色から「邪気を払う」とされています。それが登場してくるところに、何か因縁めいたものを感じさせるのでしょうか。

 

  お話から「刀」のことを連想して、あることに気付きました。

 「刀を研ぐ」そして「小豆を研ぐ」…どちらも使いますね。意味はもちろん違いますが、あえて共通点を探すと、作業後の「光沢を出す」ことがあります。絵になりやすい作業かもしれませんね。

 

 いろいろと想像してみる楽しさが伝説や関連書にはあります。

 

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