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執筆者の写真晴夫 沼澤

「羽後の子ども」第11集より


 昭和55年度(1980)は4月当初に町が過疎地域に指定されました。


 この年の夏から秋は、日照不足・低温で水稲に深刻な被害がでました。

 11月には樹齢約1,200年を誇った上到米・高橋の大杉を伐採することになりました。

 1月に西馬音内の盆踊が国の重要無形民俗文化財に指定されることになりました。

 2月には、現在の羽後明成小校舎である新成小学校の新校舎が落成しました。

 

 

 

   とうさんのひるね

            三輪小1年

 

とうさんがねっていた。

とうさんのひげに

「ふう。」と、口ぶえをふいた。

とうさんは、ねったまま

にやっと、わらった。

とうさんは、ねったふりをしてたんだ。

 

とうさんのズボンを

ぐいっとひっぱった。

とうさんは、ぐるっとうしろをむいた。

 

とうさんに、うまっこのりをした。

「はいし。はいし。」したとたん

がばっとおきて

「こらっ。」と、わたしをつかまえた。

とうさんは、

やっぱりねったふりしてたんだ。

 

 

◆父と娘の、顔が見える、動きが見える、心が見える。日常生活のなかにある何気ない一コマの風景がとても微笑ましく、周りの空気も和らいで見えるのはどうしてだろうか。親子が親子であることの愛おしさが伝わってくる。

 

 

 

 

     コマ

 

          田代小6年

 

バザーの会場の前。

開場の秒読みが始まる。

さっきまでざわついていたのが、

シーンと静まる。

こ動が早まってくる。

「三、二、一、よし。」

ガラガラと戸が開かる。

ドドー。

人の本流になり流れこんでいく。

コマとコマがぶつかったように、

はじきとばされた。

机にぶつけられ

一しゅんポカンと口をあけていた。

その間にも人が流れこんでいく。

「早くしねばコマ取られる。」

あわてて人の流れにとびこむ。

ベルトコンベアーに乗っているように

ひとりでに進んでいく。

目当てのコマが目に入った。

スリのようにパッとコマをつかみ取る。

きんちょうが頭のあたりから

スーと消えていった。

目当ての物をふくろに入れて

ゆっくりと会場を出た。

 

 

◆人は何かに「ねらい」を定めて生きていく動物でもある。今回のねらいは「コマ」。そこへ向かう道のりと、手にするまでの時間を注意深く観察し、自分の心も見つめて描き出している。人はまたそんなことを、コマのように回りながら繰り返す。

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