羽後の子ども」第25集(1994度)より紹介します。
この平成6年度は、本町に初めて幼稚園(明通)が設けられた年です。夏には、長い工事期間を経て、横根峠の改良が完成しました。町が合併して四十周年記念式典も開催されました。
明けた平成7年には1月に西馬音内で五棟が全焼する火事があり、阪神淡路大震災が起こった年度でもあります。
いのこり
新成小3年
今日もいのこりをした
外にでたらもう、うすぐらい
でもしかたない
いそぐしかない
今日の算数はとてもむずかしかった
でも、わり算はもうできるようになった
ゆう太君と二人で学校を出た
どんどんくらくなる
空を見上げて「ふうっ」とため息をついた
白鳥も五羽、八羽と
足田つつみから川の方にとんで行く
ぼくはどんどん走った
白鳥は、ぼくをおいこして
とんでいく
ぼくも負けないで足をはやめた
◆初冬の頃だろうか。いのこりしての勉強は嫌だけれど、やりとげた充実感もある。辺りは暗くなってさみしい気がするけど、家の中はきっとあたたかい。白鳥とともに「待っている場所」へ足を進める君の姿が見える。
月
仙道小6年
今日の月
ねこのねているざぶとんの上は
月に照らされて
ぼくの家の後ろは山だから
あまり光が入らない
なのに今日だけは
バランスよく入ってくる光
刈田にたまっている水に
当って反射している光
ダイヤモンドの水だ
水銀だ
少し風が吹いている
杉の木は電車に乗ったようにゆれている
大きな雲が風の電車に乗ってきた
ぼくは辺りを見回した
光の世界が消えた
◆月の光に誘い出されて、夜の景色をのぞき込む。その日だけの特別の様子ではないかもしれないが、誘われた者は一瞬だけ、ちがう世界に入ったような…。そして自然の見せてくれた永遠を感じた。
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