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執筆者の写真晴夫 沼澤

「羽後の子ども」第20集より

 町の小中学校児童生徒詩文集の継続は20集を迎え、その号は記念特集が組まれています。


 さて、この年は、平成元年度としてスタートが切られました。


 町のキャッチフレーズを「緑と踊りと雪の町」とし、新たに町の花「福寿草」、町の鳥「うぐいす」と決定しました。


 うご町「郷土かるた」が完成したのもこの年です。


 夏には干ばつで水不足となり、田代・仙道地区に給水車が出動しました。

 また、飯沢小学校の新校舎(今のわか杉)が落成したのは、この年度末でした。

 

 いかにも小学生らしい詩作品を二つ紹介します。


 

やめたいなあ

 

    明治小4年

 

「指しゃぶるな」

今日も言われた

わかっているんだよ

自分でも

気がつくと 親指が

もう口の中にあるんだ

 

「親指さばんそうこうはってける」

先生はそう言うけど、

そしたら、

左手をしゃぶってしまうんだ

 

どうしてだろう

どうしてやめられないんだろう

まるでじ石みたいに

しらない間に すいついている

おいしいわけでもなく

かっこいいわけでもないのに

 

やめたいなあ

なおしたいなあ

心の中では

いつもそう思っているんだよ

 

            

◆止めたいのに、直したいのに、そう強く思っていても、どうしても体がいうことをきかない。どちらが本当の自分なのか。いや、どちらも本当の自分だと気づいているからこの詩がある。人はいろいろな場面で、その葛藤に悩む。

 

 


 

  つり

 

       三輪小5年


ふるえながら糸をたらす

いまにも雪がふりそうな空

背中をちぢめて待っている

一時間。

うきがこおりついたように動かない。

 

ビクッ、

父のうきが動いた

大物だ。

よしぼくもつるぞ。

気持ちがふくらむ。

さおを持つ手に力をこめる。

ビクッ、

よし、きた。

グイとひきあげる。

小物だが確かにつった。

指先のマヒも、一しゅんわすれる。

 

しずんだエサに集まってきたらしい。

快調につれ始めた。

しかし、

もう手先の感覚がない。


歯がガチガチなってくる。

六まい着こんだ背中に風があたる。

きょうの収かく、

小さなフナが四十ぴき。

クーラーボックスの中でふるえている。

 

 

◆ふるえているのは人か。小魚たちか。静かな水面、そして白い時間が流れているときに、急に動きだしたのは、仕掛けた者、踏み出した者がいるから…。これは生き方にも通ずる。釣りをする人は、いったい何を得ようとしているのか。

 

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