この年度は「昭和」の最後、つまり63年度となります。
6月に町役場の新庁舎が現在位置に完成し、移転しました。さらに道路を挟んだ高校跡地が川原田分譲宅地として分譲を始めました。
9月には、田代青年後継者会が東京で「嫁来いパレード」を行い話題となりました。
この年も異常気象による冷害(羽後町作況指数83、被害額約10億円)が記録されました。
今日は季節に合わせ、中学生から紹介します。
はさがけ
仙道中1年
大きく 稲の束を
空に なげあげる
とうは
がしっと それをつかむ
つかんだ稲束を半分に分けて
はさがけにする
「とう 落ぢるなよお」
思わず叫ぶ
とうは
二ヤッと笑って
「おう!」と、答える
落ちるわけ ないよなあ
とうはもう二十年以上も
百姓をしている
はさがけのベテランだものなあ
低い手のとどく所は、
ばあちゃんやじいちゃんがするけど
上の方は
やっぱり とうでなくっちゃなあ
とうのかけた はさがけは、
きれいだ
稲の穂が
そっくりとそろって
金色の幕みたいだ
兄さんがマメトラで
稲束をどっさり運んでくる
腕がいたくなったけど
とうにほめられたくて
夢中になって
稲束をなげつづける
ああ
空が青いなあ
◆「米をつくる」という営みの終盤近くなった頃の、安堵感や晴れがましさのある風景だ。受け継がれてきた「百姓」の仕事は、家族それぞれが力を合わせることで、より輝いて見える。誠実な姿を、今もきっと空は見ていると信じたい。
ほおずき
新成小6年
冬の寒い日の放課後
一人で学校の門をでる。
暗やみの中
私の手のなかに
ころころと動く
ほおずき。
橙色のほおずきは
だんだんとやわらかくなっていく。
暗い道のさみしさが
ほぐれ
一人のさみしさが消えて
手の中で
温かくなっていくほおずき。
暗い心の中に
ころころこところがる橙色のほおずき。
やさしさが
温かい丸味が
私の心に呼びかけてくる。
いつのまにか
私の心に
住みついたかのように
まるでほおずきにも
心があるみたい。
とてもやさしい温かい心が。
部屋の中の机の上と
私の心の中に
橙色の粒がころりと。
「今、ここにあります。」
という風に置かれている。
◆誰に手渡されたかわからない、もの言わぬ球形の果実と、一緒に歩く帰り道。そこに「対話」が生まれる。それは、言葉ではなく丸みや温かさが伝えること、耳に聞こえなくとも、手や心で確かに感じ取ること。そんなふうに世界は発見で満ちている。
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