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執筆者の写真晴夫 沼澤

「羽後の子ども」第10集より


 昭和54年度(1979)の発刊です。

 この年は、秋9月に羽後トンネルが開通しました。

 10月には消防署羽後分署に救急車を配備されています。

 11月には、今にながる「町民憲章」が制定されました。


 この頃は、52年度に元西小学校、53年度に西馬音内小学校、そしてこの年度に仙道小学校、三輪中学校と、新校舎落成が相次いでいる頃です。




 小学生の詩2編を紹介します。

 どちらも「実感」あふれる作品です。 



  心ぞう かぜひいた

           明通小2年

 

 

体育しゅう会で

グラウンドを走った。

さいしょは弱く

あとから ありったけ走った。

みんな

「はあ はあ。」

と、くるしそう。

三しゅうした。

「あどいいから歩け。」

と、先生がいった。

少し歩いて休んだ。

「ああこや。」

ぺたっと、みんなすわった。

とつぜん、大きな声で、

「あーあ、心ぞうかぜひいだ。」

と、みゆきさんがさけんだ。

みんな どっとわらった。

 

◆秋のある日、持久走の練習をした様子がたんたんと描かれる。「はあ、はあ」という息づかい、「ああこや。」という声から、みんなの顔が浮かんでくるようだ。「みゆきさん」の一言は、みんな一緒に感じている心をずばっと表し、笑顔が広がった。

 

 


   土をほる

         三輪小5年

 

父さんが

ザクッ と くわをいれた。

黒い土が くわといっしょに

もこっと出てくる。

こしを曲げて土をほる。

 

父さんの手には しわがある。

でも、力をこめてにぎる手は

てかてかひかっている。

首に手ぬぐいをかけて

うでに力をこめて土をほる。

ほるたんびに 土のにおいがする。

 

空いっぱいに

ふりあげたくわが

キラリと光る。

夕日をうけた父の姿が

影絵のようだ。

 

土のにおいが横に流れていった。

 

 

◆父を見つめて受けとめた、「こしを曲げて」「しわ」「力をこめて」は、現在の人間があまり感じ取れなくなっている造形のような気がする。この詩にある音や光や影がそのイメージを作り出している。何より強いのは「土のにおい」だ。

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